人間のいるところ、かならず生活がある
生活学プロジェクト

2016年度生活学プロジェクトの採択プロジェクトの概要

 

2016年度生活学プロジェクトの採択プロジェクトの概要

2016年度は、数多くの応募をいただきました。限りある予算の中で、採択を受諾された応募者の方に感謝いたします。以下概要を紹介します(50音順・文体は申請通り)。

  • 「移動」を前提とした社会人の学びに関する研究—読書会「モビリティーズ・カフェ」を事例として
    尾内志帆 株式会社慶應学術事業会
    さまざまな「移動」により多様化・複雑化する現代生活の中で、社会人の学びの場のデザインについて探索的に研究するプロジェクト。研究対象は、筆者が企画運営する読書会とする。研究手法はアクションリサーチを基本とし、ファシリテーター兼いち参加者として参与観察を行いながら場づくりを実践し、それによって得たデータを分析・考察する。人と人とのつながりを育む、あたらしい場づくりへの視点を見出すことを目指す。
  • トランスナショナルな生活世界の映像民族誌的研究
    大橋香奈 慶應義塾大学
    世界各地で、国境を越えて移住する人の動きが増大している。彼/彼女らは、移住後も、母国や他国で暮らす家族や大切な人との国境を越えた交流を続けることで「トランスナショナルな生活世界」を生きている。本プロジェクトは、社会的現実の複雑性を民族誌的分析以上に把握できるものはないという指摘と、民族誌的研究における映像の持つ可能性の議論をふまえ、映像民族誌の手法で「トランスナショナルな生活世界」の理解を試みる。
  • 社交料飲業における親密性および公共性調査
    小関孝子 産業能率大学
    「水商売」と呼ばれるナイトビジネスの世界は外部者からは実態が見えにくいにもかかわらず、多くの女性たちが「水商売」を生業に生きてきたという歴史的な事実が存在する。本プロジェクトでは調査員自身のママ経験をもとに、銀座クラブ経営者との対談およびインタビューを実施する。銀座のママを女性経営者として捉えなおし、「水商売に生きる」ことの意味を、彼女たちの人生に寄り添いながら理解することを目指したい。
  • 左義長に生活様式の変化をみる:栗東市目川・岡地域を事例として
    笠井賢紀 龍谷大学社会学部専任講師
    本プロジェクトは日本各地に伝わる「左義長」について、栗東市の目川地区・岡地区を中心として研究を行うものである。他の民俗行事同様に左義長も地域ごとに多様性を見せ、同じ地域でも変遷を遂げているが、本プロジェクトでは、多様性・変遷自体だけではなく、その多様性・変遷はどのような生活様式の変化によるものか、そして「なぜ」そのような多様性・変遷を経験・選択するにいたったのかを調査を基に検討するものである。
  • 過疎化する農村集落の活性化、集落に残る民家の活用、高齢者の集団による地場の伝統技術を生かしたものづくり、生涯現役で生き抜く生きがいを有機的に結ぶプロジェクト
    金田正夫 無垢里
    人生に定年は無く生涯生きがいを持って生き抜く生活、環境と共生する生活、永く育んできた技術や風土を生かしたものづくりによって生計を生み出す生活と村との共生、新潟県高柳の民家活用とを有機的につなげた生活像を作り出す試みです。具体的には鍛造による農工具づくり、青曽から繊維を取り出し紡ぐちぢみ織物、茅場・茅葺の再生、和紙 漆、ブルーベリー酒、木工家具等のものづくり等を通じて村の方々との共生を図ります。
  • 郷土食による中山間地小規模集落の地域おこしに関する考察 -南信州の祭り街道弁当プロジェクトを事例に
    甘 靖超 人間文化研究機構総合地球環境学研究所
    長野県下伊那郡天龍村坂部は中山間地小規模集落であるが、2013年に地元の住民団体は南信州「祭り街道弁当プロジェクト」を立ち上げ、「坂部の冬祭り」をモチーフにした弁当を開発し、道の駅や県外の県情報発信拠点で「祭り街道弁当フェア」を開いている。
    本研究は「祭り街道弁当プロジェクト」の進行状況を明らかにし、伝統芸能と郷土食を融合させた地域おこしの動向を捉える事を目的としている。さらに過疎化した農山村集落における地域おこしの可能性と今後の課題、伝統的食文化のもつ社会的機能を検討する。
  • 高齢者の生活習慣からみた住まいにおける生活用品の実態に関する研究 都営戸山ハイツを対象に
    古賀繭子 日本女子大学大学院
    公営住宅は高齢化が急速に進む一方で、高齢者の長期居住により住戸内は生活用品が増加し、衛生的で健康的な居住環境維持が課題となっている。そこで本プロジェクトは高齢居住者の生活用品に対する意識や習慣を把握すると共に、住まいにおける生活用品の入手方法から管理および整理の実態を明らかにし、高齢者が居住し続けるために必要な住戸内居住環境整備の要件を抽出し、衛生的で健康な居住環境を維持するための手法を提示する。
  • 狩猟採集民ブッシュマンにおける葬儀の変容に関する研究
    杉山由里子 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
    ボツワナ、カラハリ半砂漠に生きる狩猟採集民ブッシュマンを対象とし、「死」を切り口にブッシュマンの社会や文化を通時的に分析します。彼らの生活は政府による政策の影響を受け、伝統的な遊動生活から定住生活に変化しています。かつての自然に大きく依存した生活や儀礼は変化し、年々簡略化される傾向にあることが先行研究によって報告されてきました。本プロジェクトでは、これまで注目されてこなかった葬儀に目を向けて現地調査を行い、葬儀や死生観がどのように変化しているのかを明らかにします。またこれにより、ブッシュマンがいかに変動する社会を生きぬいているのかを考察していきます。
  • 室内犬、完全室内飼いのネコと人間の生活の実態調査 ー京阪神都市部の集合住宅でのケーススタディ
    壽崎かすみ 龍谷大学国際学部
    日本で犬の室内飼育、ネコの完全室内飼育頭数が戸外飼育、ネコを戸内外行き来させる飼育頭数を上回ったのは、約10年前のことである。日本人が犬やネコと生活する仕方は、ここ20年位の間に大きく変化している。特に集合住宅での室内飼育の増加は著しく、新しい生活スタイルであるためのトラブルも多い。分譲集合住宅については、国土交通省が示す「マンション管理規約」の標準形の中で「ペット管理規約」ももりこまれ、居住者間のトラブルは減少傾向にある。
    しかし、日本人が犬やネコを室内飼育するとき、犬やネコを住戸内(戸建、マンションを含む)でどこまで自由に部屋を行き来させているか、犬やネコの住戸内での居場所をどこに、どんな形で設定しているかなどの調査はまだない。
    本プロジェクトでは、犬ネコ飼育可のマンションの管理組合の元におかれているペットクラブ(国土交通省の管理規約に記載されている)、協力の得られた住人へのインタビュー調査、獣医師、犬のしつけ教室のインストラクター等への調査を通じて、日本人と犬やネコの同居生活の実際を明らかにする。
    実態を明らかにすることで、ペット飼育にまつわる問題の解決の糸口も見えると考える。
  • 「全国の闇市を歩く」プロジェクト
    初田香成 東京大学大学院
    本プロジェクトは第二次大戦直後に現われた闇市の全国の実態を網羅的に把握し、その現存例および跡地を踏査しようとするものです。本学会副会長もつとめられた松平誠先生による研究成果を引き継ぎながらも、対象を全国規模に拡大し、災害後の都市現象として現代的な意義も踏まえることで、闇市像、引いては日本都市史の特質を再構築したいなどと考えています。既に行った自治体史の総覧作業からは、闇市の組織主体やそれへの対応が自治体により大きく異なるなど、従来以上に多様な姿が浮かび上がってきています。
  • 住宅地の遊び場に関する住民ワークショップの実施とその後の利用実態調査
    平本真理 慶應義塾大学環境情報学部
    東京都調布市深大寺にある公園予定地を対象に、住民参加による子供の遊び場の計画を、応募者が所属する研究室の学生プロジェクトチームが主体となって行います。行政と住民による利用方法を模索するワークショップを実施して住民参加による遊具やベンチ等を製作します。その後の継続的観察を通して、実施後の子どもたちによる利用の実態や、行政と住民同士の交流のきっかけづくりの効果の検証を行います。
  • ペットと暮らす家庭の生活実態調査
    廣瀬慶二 Fauna+Design
    筆者の調査チームは2009年より犬と暮らす家庭を対象に、以下の調査を行ってきた。
    ・平面図の作成
    ・S(就寝場所,sleep,siesta)、T(排泄場所,toilet)、F(食事場所,food,feed)の位置を平面図内にプロット
    ・生活上の難点を写真で把握
    採集した間取りとS,T,Fの関係を分類し(STF調査)、居住者が間取りの影響を受けて行動することが犬にどのような刺激を与えているのかを行動分析する。
    以上が本研究の内容です。現時点で200世帯を超えるデータを保有しています。
  • 新エネルギー開発の当事者性と制度的な課題解決に関する日中比較研究
    松村悠子 大阪大学大学院
    本プロジェクトでは、世界各地で開発が盛んに行われつつある地域社会に根ざした新エネルギー開発とそこから派生するコンフリクトに着目する。①日本および中国の新エネルギー開発実践について調査を行い、②多層的な側面から比較することで、当事者性と制度的実効性の視点から地域社会におけるコンフリクトの望ましい解決策を考察することを目的とする。また日中双方の特性を重視しながら、より普遍性のある結論を導き出していく。
  • 東日本大震災を経た郷土芸能団体の「ヤド」の空間的調査-岩手県下閉伊郡山田町の「山田祭」参加団体を事例として-
    森田椋也 早稲田大学大学院
    2011年の東日本大震災に伴う津波により被害を受けた三陸沿岸地域において、被災後も継続して活動を実施してきた郷土芸能団体に着目し、団体の用具倉庫や活動拠点である「ヤド」の空間調査を行い、人びとの文化的活動を持続していくために供給すべき仮設建築物の空間的要件(設備・規模・立地等)を明らかにする。これにより、被災後のまちの暮らしにとって不可欠と考えられる郷土芸能の再興に資する知見を得ようとするものである。
  • 『婦女新聞』に見る大正期から昭和戦前期の衣生活に関する研究
    横川公子・池田仁美・村田裕子・原田陽子 武庫川女子大学
    『婦女新聞』を主な調査対象として、大正期から昭和戦前期の洋服裁縫の受容の実態を発掘し、時代に通底する女子の教育や生活のあり方を探ります。『婦女新聞』(1900−1942)は、女子教育方針の確立、善良な家庭の創造、家事経済の知識の普及、婦人団体の交流・発展等を目指して発刊。読者層は女学生、教師、文検の受験生、師範学校生などで、彼らは洋装受容者でもありました。女性役割ともされる洋裁と洋装受容を把握するとともに、時代の要請との関係性を炙り出すことで、実態的な女子教育や女性観を展望したい。
  • 「ナビゲーション地図としての江戸切絵図のデザイン再考」
    吉田桃子 慶応義塾大学環境情報学部
    江戸時代に町でのナビゲーション地図として作られた江戸切絵図の図式などを用いて、渋谷などの都市を描き、それを通じて現代の都市空間を批評的に読み解くことを試みます。
    切絵図のデザインを解析し、容易に設計・製作できる方法を考え、作った地図を実際に手に持って眺めながら行う街歩きなど、参加型のワークショップも実施して、江戸切絵図のデザインの有効性や、携帯型のナビゲーション地図のデザインの検証を行います。

生活学プロジェクト

 

生活学プロジェクト

日本生活学会事業委員会

2015年度より始まった生活学プロジェクトは、若手会員・多様な人材の育成・支援、研究参画の機会の提供、成果発表の機会の提供、学会内外の研究交流、学会の社会的発言力の強化を目的として、生活学に関わる研究活動、ワークショップやフィールドワーク、講座、その他、学会の目的(会則第4条)に即した活動を対象に、助成を行っています。
採択されたプロジェクトは、「日本生活学会・生活学プロジェクト」として生活学会が運営する各種媒体で内容を発表することができるほか、様々な媒体にて生活学の存在を知らしめていただく役目を担うことになります。

PAGETOP
Copyright © 日本生活学会 All Rights Reserved.