人間のいるところ、かならず生活がある
日本生活学会の100人

vol.19 吉成哲平氏

 

「「写真実践」から描き出してゆく、戦後の生活者の営みとその思想」
吉成哲平氏(大阪大学大学院人間科学研究科・博士後期課程)

インタビューアー 土居浩(ものつくり大学)、饗庭伸(東京都立大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

まずはご自身の研究フィールドをご紹介ください。

 専門は写真の実践研究、生活環境論、人間と自然の共生です。大阪大学大学院人間科学研究科で三好恵真子先生の環境行動学研究室に所属しています。私の研究室は「実践志向型地域研究」を掲げており、人間の生活の営みを見つめながら、土地々々の望ましい環境の在り方を学際的に討究しています。
 もともと高校のときには理系を志望していました。航空宇宙工学の方面に関心があり、いったん某大学の理工学部に進学したものの、一般教養科目で受講した文化人類学に関心が惹かれ、現在の大学へ入り直しました。入学当初は文化人類学や国際関係論の科目等も履修しつつ、授業以外では、たとえば奈良県十津川村で林業に携わってきた方々のライフヒストリーを調べたり、また、三好先生よりご縁を頂き、阪大の学生有志で大阪府能勢町の食育計画に携わったり、学部の様々な取り組みに関わらせて頂きました。
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vol. 18 溝尻真也氏

 

「趣味としての手づくり」の歴史と現在
溝尻真也氏(目白大学メディア学部准教授)

インタビューアー 笠井賢紀(慶應義塾大学)、土居浩(ものつくり大学)、饗庭伸(東京都立大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

日本生活学会研究論文賞の受賞おめでとうございます。まずはご自身の研究フィールドをご紹介ください。

 もともとは・・・、いや今でも「メディア研究」が専門です。その中でも音楽を中心に、「音楽メディアのユーザー史」を研究してきました。子どものころからメディアに興味があり、高校生の時には放送部に入って自分で番組をつくったりしていました。それが高じて大学入学後の研究テーマもメディア研究を選び、特に音楽が好きだったので、音楽とメディアについて研究してきました。ラジオやテレビといったメディアは音楽をどう媒介してきたのかが、主な研究テーマです。
 修士課程では、特にFM放送の歴史研究に取り組みました。FM放送はAM放送に較べて音質が良かったので、それが音楽ファンの人たちにとってどう重要なメディアになっていくのか、ということを調べました。そして調べていくうちに、オーディオマニアの重要性が見えてきました。初期のFM放送がまだ実験放送の段階で、受信機もほとんど普及していない時期に、その実験放送を誰がどのように聞いていたのかを調べてみたら、自分で受信機を組み立てていたマニアの人たちの存在が浮かび上がりました。その人たちのあいだで「音質のいい、すごいメディアができた」という話が広がっていくところから日本のFM放送の歴史が始まったということが分かり、とても面白いと感じましたね。
 こうして、自分の興味の対象が「マニア」に移っていったわけです。自分で受信機を組み立てるような人たちは、何が楽しくてそれをやっているのだろうか、ということを知りたくなり、博士課程ではオーディオマニアへのインタビュー調査に取り組みました。 (さらに…)

vol. 17 吉江俊氏

 

都市論と計画の葛藤を越えて -地方都市のまちづくりと大都市の消費都市論を往還する
吉江俊氏(早稲田大学理工学部講師)

インタビューアー 石川初(慶應義塾大学)、土居浩(ものつくり大学)、饗庭伸(東京都立大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

博士論文賞おめでとうございます。「首都圏の民間による集合住宅供給における住環境価値の商品化と立地地域の変容」という論文ですね。まずはどのようなキャリアを歩んでこられたのか教えてください。

 研究者として長いキャリアがあるわけではないのですが、都市計画や都市論を専門にしており、そのうち都市論を大事にしています。
 もともと画家を志望していました。理系の受験勉強の合間に絵を描いていたら、やっぱり絵を描きたいなとなり、建築学科に進学することにしました。最初は建築家になりたいと思っていたのですが、大学で出される課題に対して、例えば美術館の設計課題なのに、美術館の展示内容を考えてしまうなど、違うことを始めてしまうような学生で、建物が建つまでの構想が楽しいと思うようになり、早稲田大学の後藤春彦先生の研究室に入りました。

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vol. 16 武田俊輔氏

 

長浜曳山祭の都市社会学—フィールドワークから見る地方都市社会と祭礼のダイナミズム
武田俊輔氏(法政大学社会学部教授) 

インタビューアー 土居浩(ものつくり大学)、笠井賢紀(慶應義塾大学)、饗庭伸(東京都立大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

武田さんご自身の研究フィールドとキャリアについて、ご紹介ください

専門は社会学です。出身は東京大学大学院人文社会系研究科の社会学研究室で、院生のときは歴史社会学の観点から民謡や民俗芸能を手がかりに、戦前期日本のナショナリズムやメディアについて研究してきました。直接の指導教員ではなかったですが、佐藤健二先生には一番影響を受けています。
2003年に滋賀県立大学に就職してからもしばらくはそういったテーマの研究が中心でしたが、教育面でフィールドワークを重視する学科だったこともあり、それまで、全くやったことがなかったフィールドワークを自分でも実践するようになりました。現在は、地方都市や農山漁村の祭礼や民俗芸能を手がかりとして、地域社会の社会構造や社会的ネットワークを明らかにすることが最も中心的な研究テーマです。 (さらに…)

vol. 15 長岡 慶氏

 

現代ヒマーラヤ世界におけるチベット医学と多重の身体
長岡慶氏(日本学術振興会特別研究員・関西大学)

インタビューアー 笠井賢紀(慶應義塾大学)、土居浩(ものつくり大学)、饗庭伸(東京都立大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

長岡さんご自身の研究フィールドとキャリアをご紹介ください。

専門は医療人類学と南アジア地域研究です。そのなかでも、ヒマーラヤ地域の伝統医療について研究してきました。そもそものはじまりは大学の学部時代で、早稲田大学の教育学部社会科地理歴史専修というところで歴史学や地理学、人類学を勉強していました。一番関心があったのは、「暮らし」のなかの自然と人間の関係です。なので、大学の後半は、自然地理学と文化人類学の二つのゼミで勉強しました。自然地理学のゼミは理系寄りで、地形学や地質学をベースに源流から川を辿って海まで巡検に行ったり、テレビ番組の「ブラタモリ」でやっているような地層の観察といったことをしていました。 (さらに…)

vol. 14 浅田静香氏

 

生ごみを調理用エネルギー源として再資源化 ―ウガンダにおけるバイオマス・ブリケットの生産と生活への浸透
浅田静香氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科*)

インタビューアー 真鍋陸太郎(東京大学)、笠井賢紀(龍谷大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

浅田さんご自身の研究フィールドとキャリアをご紹介ください。

私は京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科(ASAFAS)で博士課程に在籍しています。専門はアフリカ地域研究で、特に東アフリカのウガンダ共和国で料理に使う燃料の研究に取り組んでいます。中心的なトピックとして扱っているのは、バナナの果皮などの生ごみから作られるバイオマス・ブリケット(biomass briquette、以下ブリケット)という固形燃料です。ウガンダでは2000年代から都市の中で、木炭の代替として使用できるブリケットが作られています。そのブリケットがどのように作られ、どうやって人びとの生活に受け入れられているかということが私の大きな研究テーマです。 (さらに…)

vol. 13 江口亜維子氏

 

生活環境にコモンズ的空間を生み出す活動
江口亜維子氏(千葉大学大学院園芸学研究科 博士後期課程*)

インタビューアー 饗庭伸(首都大学東京)、真鍋陸太郎(東京大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

自身の研究フィールドとキャリアをご紹介ください。

現在の研究分野は地域計画学です。千葉大学大学院園芸学研究科で、木下勇教授の地域計画学研究室に所属しています。園芸学研究科ということもあり、造園学ならではのハワードのガーデン・シティ思想を背景とした都市計画思想が根底にあります。その中で、人間の生活を基盤とした空間の計画を組み立てるという教えのもと、私は、場づくりやコモンスペースの研究を進めています。 (さらに…)

vol. 12 森下詩子氏

 

北欧と日本、実践と研究の間から見えてくる “自分ごと” の探究
森下詩子氏(東京大学大学院学際情報学府修士課程/kinologue主宰/クリーニングデイ・ジャパン事務局代表*)

インタビューアー 真鍋陸太郎(東京大学)、笠井賢紀(龍谷大学)、饗庭伸(首都大学東京)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

まずは森下さんの研究フィールドとキャリアをご紹介ください。

研究といっても、今、修士2年なので研究者と言えるのか?というレベルですが、研究のフィールドはメディア論です。2017年4月から東京大学大学院学際情報学府の水越研究室(メディア論)に所属しています。修士課程は2回目で、以前は社会学で学部のすぐ後に修士へ行きました。
ここ1年やってきて思うのは、1度目の修士課程であった社会学が自分のアカデミックなベースにあるということです。前の大学院を修了してから、ほぼずっと映画配給の仕事をしてきました。2014年からフリーランスでやっています。新卒で映画業界に入った時からのことを考えると、ずっと同じ仕事をしているようで、内容が大きく変化しています。浮き沈みの激しいこの仕事を、20年近く続けていることも奇跡的だと思います。 (さらに…)

vol. 11 初田香成氏

 

災害後の都市現象という観点から全国の闇市跡地を踏査する
初田香成(工学院大学建築学部建築デザイン学科・准教授*)

インタビューアー 笠井賢紀(龍谷大学)、饗庭伸(首都大学東京)、真鍋陸太郎(東京大学)
この原稿はネット・インタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

まずは初田さんの研究フィールドとキャリアをご紹介ください。

専門は建築史、なかでも都市史を専攻しています。都市史は文系から理系にまでまたがる分野ですが、建築史の立場から都市史を研究しています。大学入学時は文系で日本史か地理を学ぼうと考えていましたが、進路変更して工学部で都市計画を学びました。卒業論文では日本もしくはアジアの盛り場に特有の建築類型と考えられる雑居ビルについて、フィールドワークと歴史研究を行いました。新宿・歌舞伎町一丁目の全てのビルを対象に平面図とテナントの業種を採集して分析するとともに、その発生過程を明らかにしようとしたものです。修士論文では東京都心部の闇市とその後の再開発過程を研究しました。とくに新橋西口の闇市と、それを東京都が再開発してできた「ニュー新橋ビル」を取り上げ、ビルの内部に闇市的な空間が再生産されていく経緯を調べました。本来は不法占拠だったはずの闇市がいつのまにか定着して存続していく過程が面白く、闇市を大都市流入者が定着する際のインキュベーターとして捉えようとしました。今から思うといずれも特徴的な都市建築から都市の歴史に迫ろうとしたものでした(ここでの都市建築とはある時代、ある都市に似た形式を以て多数現われるビルディングタイプと定義しています)。博士課程からはこのような問題関心を深めようと、建築史の研究室に入りました。研究室ではフィールド調査と実証研究を通じて、住宅や建築を個々の作品としてではなく都市を構成するものとして見る視線を学びました。博士論文では雑居ビルや闇市を作りあげてきた戦後日本の都市について、現在の都市計画・都市再開発が確立するまで過程での様々な試みや、その背景にあった大都市流入者の動向を明らかにしようとしました。その後、「都市空間の持続再生学」という都市・建築・土木の分野融合研究拠点の特任助教、建築学科の助教、プリンストン大学の客員研究員などを経て、現在の職場に着任しました。 (さらに…)

vol. 10 姉崎正治氏

 

生活学の懐の中で鉱業社会の持続性を文理融合研究として挑戦
姉崎正治氏(産業技術短期大学機械工学科・特任教授*)

インタビューアー 真鍋陸太郎(東京大学)、饗庭伸(首都大学東京)
この原稿はスカイプでインタビューを行った原稿をインタビューイー、インタビューアーが加筆するというやりとりを経て作成しました
*所属などはインタビュー時のものです

博士論文賞の受賞おめでとうございます。姉崎さんは70代で博士号を取られたという異色のキャリアをお持ちですが、まずはご自身の研究フィールドとキャリアをご紹介ください。

今年の6月で75歳になりました。生活学会の100人のVol.6の小関さんが「大人ポスドク」と自称されていましたが、私自身は「シルバー・ポスドク」と言っています。
私のキャリアは、60歳で住友金属工業での技術研究職を定年退職するまでの第1期と、その後今日までの第2期に分けられます。第2期では過去をゼロクリアーして、大阪外国語大学に入学し、大阪大学との合併を経て外国語学部でスペイン語やラテンアメリカ史分野で学部と修士課程を終え、博士課程に進学しました。以上の二つの経験が人間環境論やサスティナビリティ学として融合して大阪大学人間科学研究科での博士論文に集約されました。 (さらに…)

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